近年、日本の高齢化社会が進む中で、介護業界は深刻な人手不足に直面しています。

この課題を解決するために、外国人介護福祉士の重要性がますます高まっています。彼らの存在は、日本の介護現場において欠かせないものとなりつつあります。

しかし、外国人が介護福祉士として働くためには、試験の合格や在留資格が必要です。

そこで本記事では、外国人介護福祉士の受験資格、試験の合格率、さらには介護職に従事できるそのほか在留資格など、知っておくべきポイントを徹底解説します。

これから介護福祉士を目指す外国人の方々や、外国人介護福祉士の採用を考えている事業者の方々は、ぜひ最後までご覧ください。

在留資格「介護」とは

まずは、介護福祉士国家試験に合格することで得られる在留資格「介護」について解説をしていきます。

介護福祉士に合格した外国人が得られる資格

在留資格「介護」とは、日本で介護福祉士として働くことを許可する在留資格です。外国人がこの資格を得るためには、まず日本の介護福祉士国家試験に合格する必要があります。

在留期間は最長5年間で、更新回数も制限がないことから永続的な就労が可能です。また、家族帯同(配偶者と子)も可能であるため、在留資格「介護」の取得を目指す外国人は年々増加しています。

在留資格「介護」で働く外国人数

2023年末時点の政府統計によると、在留資格「介護」で働く外国人の数は9,328人となっており、対前年比で48.4%も増加しています。



出典元:出入国在留管理庁「在留資格別 在留外国人数の推移(2023年末)」

一方で、後ほど解説する、そのほか主要な就労目的の在留資格である「特定技能」「技能実習」などと比べると、在留数はまだまだ少ないのが現状です。

在留資格「介護」の課題

2017年に新設されたばかりの在留資格ということもあり、まだまだ在留数が少ない点は課題です。

また、在留資格「介護」を取得するためには介護福祉士国家試験の合格が必須であり、日本語能力もN2程度のレベルが必要となっています。在留期間や家族帯同、業務制限の少なさなど、メリットが多い在留資格ではありますが、取得のためのハードルの高さが大きなデメリットであり、普及を促進する上での課題となっています。

次章では、より詳しく介護福祉士国家試験について解説をしていきます。

外国人介護福祉士の受験資格

現在、介護福祉士国家試験を受験するには受験資格が必要です。

受験資格を得るには、「実務経験による受験」と「福祉系高等学校卒業による受験」の主な2つのルートがあります。

実務経験による受験

3年以上(1,095日以上、実働日数540日以上)介護等の業務に従事した方(従業期間は受験年度末日までが対象)で、介護福祉士実務者研修を修了している必要があります。

後述する「特定技能」や「技能実習」「EPA(経済連携協定)」の在留資格で来日し、実務経験を積んでから試験合格を目指す外国人が増えています。

福祉系高等学校卒業による受験

福祉系高等学校卒業による受験の場合、次のいずれかを満たす方が対象となります。

①高等学校又は中等教育学校(専攻科を含む)において、福祉に関する所定の教科目、及び単位を修めて卒業した方。
②特例高等学校(専攻科を含む)において、福祉に関する所定の教科目及び単位を修めて卒業した後、介護等の業務に従事(在職期間:9か月以上、実働日数:135日以上)した方。


介護福祉士実務者研修とは

介護福祉士実務者研修とは、介護職員初任者研修の上位に位置づけられる資格(研修)で、介護福祉士国家資格の受験資格の一つです。

実務者研修課程を修了することで介護に関する専門的な知識と実践的な技術を習得でき、より質の高い介護サービスを提供できるようになります。

外国人の介護福祉士試験の合格率


2024年1月に実施された「第36回介護福祉士国家試験」の合格発表が、同年3月に行われました。

厚生労働省によると、受験者数は74,595人で、そのうち61,747人が合格し、合格率は82.8%でした(日本人を含む)。

一方で、外国人受験者の合格率については、在留資格「EPA」を持つ受験者に限って見ることができます(「特定技能」や「技能実習」を持つ受験者の合格率は不明です)。

初受験者と再受験者を合わせた合格者数は228人で、合格率は43.8%でした。国別の合格率を見ると、ベトナムが86.4%、インドネシアが22.2%、フィリピンが21.3%となっており、ベトナム人の合格率が高いという特徴があります。

外国人が介護職員として働ける4つの在留資格

現在、外国人介護人材を受け入れるためには、以下の4つの制度を利用することができます。

1. EPA介護福祉士候補生
2. 在留資格「介護」
3. 技能実習
4. 特定技能

これらの制度は、それぞれ受け入れの流れや目的、在留期間などに違いがあります。


EPA介護福祉士候補生

この制度は、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国からの外国人が対象で、日本の介護福祉士資格取得を目指して介護施設で働くものです。

看護系学校の卒業生か母国で介護士の資格を持っていることが要件で、日本語能力はベトナムがN3、フィリピンとインドネシアがN5です。

介護福祉士試験に4年以内に合格すれば永続的に働けますが、不合格の場合は帰国しなければなりません

在留資格「介護」

上述した通り、この在留資格を取得するには介護福祉士の資格を持つ必要があります。

日本語能力試験N2相当の能力が求められるため、資格保有者は高い日本語力を有しており、即戦力となります。

また、唯一、訪問系サービスへの従事も可能であり、働く期間にも制限がないため、長期的な就労が可能です。

🔽在留資格「介護」(介護ビザ)についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
介護ビザとは?在留資格「介護」の概要やメリット・デメリットを解説

技能実習

この制度は本国への技能移転を目的としています。要件は介護関連業務の経験や必要な訓練の受講で、日本語は来日時にN4、1年後にN3が求められます。

通常、在留期間は3年ですが、監理団体と受け入れ機関が優良であれば5年まで延長可能です。

技能実習を良好に終了した場合、後述の特定技能に移行することができます(今後、技能実習制度は育成就労制度へと名称が変わり、特定技能制度が外国人受け入れの中心となっていく予定です)。

特定技能

特定技能は日本の人手不足解消のための在留資格で、介護技能評価試験、日本語試験N4、介護日本語評価試験に合格することが要件です。

技能実習を修了した者も対象で、技能実習よりも高度な技能が求められます。在留期間は最長5年で、介護分野での受け入れ人数は上限6万人と最も多く制度設計されています。

現在は特定技能への移行が主流となってきており、今後在留数が最も伸びていくことが想定される在留資格です。

5年間の在留期間中に介護福祉士を目指し、在留資格「介護」へ移行する外国人も今後増えていくことが考えられます。

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