生活オリエンテーションとは

今回は、特定技能でのビザの取得後に必要な手続きとしての、生活オリエンテーションに関してです。
1号特定技能外国人支援に関する運用要領という法務省が出している資料に詳細が記載されています。 別記事取り上げた、特定技能ビザ ノウハウ大公開 〜1号特定技能外国人支援計画書(参考様式第1-17号)〜であるように、1号特定技能外国人支援計画書に基づいて、ビザの取得後に日本での生活についてやトラブル発生時の対応方法など説明する必要があり、これを生活オリエンテーションと呼んでいます。以前取り上げた事前ガイダンスは特定技能ビザ申請前にやるものでしたが、生活オリエンテーションは特定技能ビザ取得後に、実際に就業するにあたり実施します。特定技能ビザを取得後には必須の手続きとなります。

生活オリエンテーションの方法・時期

生活オリエンテーションは、対面だけではなく、テレビ電話やDVD等の動画視聴でも可能とされています。しかし、特定技能外国人から内容に関しての質問があった場合に適切に応答できるようにしておく必要があります。
また、生活オリエンテーションは、事前ガイダンス同様、1号特定技能外国人が十分に理解することができる言語による実施が求められています。明確な基準はないですが、国内留学生でN1やN2以外の方々は母国語での説明の方が、双方の認識のズレなどが起こりづらいと考えられます。
生活オリエンテーションのタイミングは、海外からの場合は入国後、国内の場合は資格変更後に速やかに実施する必要があり、実施の時間としては、個別の事情により異なりますが、少なくとも8時間以上行うことが求められます。
では、事項から具体的に実施する項目についてみていきます。

日本での生活について

日本で生活する上での最低限のルールなどに関してで、全部で8つの項目が指定されています。国内の場合は、すでに日本での生活経験があるため、重要度は低いですが、海外からの場合は最重要になる項目です。
金融機関の利用方法
金融機関での出入金の方法やATMの利用方法や手数料、就業期間を終えて帰国する際の手続き方法などに関してです。
日本で生活をしていると当たり前に銀行口座を持っている人がほとんどですが、海外では給料などを現金支給のところも多くあり、銀行口座を持っていない人も少なくありません。また、将来的にクレジットカードなどを所持したいと考えている人もいる可能性もあるので、説明をしておく必要もあるでしょう。
そして、帰国する際に銀行口座を他人に渡し、その口座が犯罪に利用されるケースが多くなっていることから、銀行口座開設の審査が厳しくなっている背景も踏まえて、きちんと理解をしてもらう必要があります。
医療機関の利用方法等
症状に応じての医療機関での受診方法や保険証を持参して治療を受けることなどについてです。保険制度が整備されていない国もあるため、日本の保険制度に関しても説明が必要です。
交通ルール等
基本的な交通ルールや免許などに関してです。東南アジアの国々では、免許なしでバイク等に乗れてしまうということもあるので、日本では免許が必須であることは周知が必須です。
交通機関の利用方法等
バスや電車などの利用方法や切符の購入の仕方、ICカードの利用方法などに関してです。国によって、利用の仕方が異なるため、日本でのルールを理解してもらう必要があります。きちんと事前にお伝えしておかないとせっかく日本にきたのにどこにもいけず、、ということも起こりえないので、同行して一緒に電車等に乗ってみる、ということもした方がいいでしょう。
生活ルール・マナー
国内にいる留学生からもよく聞くことですが、日本はゴミ出しに関するルールが細分化されており、わかりづらい部分があります。また地域によっても、分別方法やゴミ出し可能な日も異なるため、居住場所に合わせた説明が必要です。また、喫煙に関してもそれぞれの国によって認識が違うため、日本でのルールをお伝えする必要があります。
生活必需品等の購入方法等
コンビニやスーパー、薬局などの場所や利用方法に関してです。居住地から一緒にスーパーにいくなどを実施すると親切でしょう。
気象情報や災害時に行政等から提供される災害情報の入手方法等
言語対応している災害情報などのHPの共有等です。
我が国で違法となる行為の例
銃砲刀剣所持や在留カード不携帯など、犯罪行為になりえないことに関しての説明です。

必要な手続き等について

所属機関等に関する届出
受け入れ企業の名称変更や所在地変更、倒産、または転職の際に必要な手続きに関してです
住居地に関する届出
海外からの場合は、入国時、在留カードに住所が記載されないため、居住地の市区町村に申請し、住所を登録し、裏面に住所を記載してもらう必要があります。また、引越し等の場合もその都度市区町村での手続きが必要なことに関してです。
社会保障及び税に関する手続
社会保障や税金に関してです。ほとんどの法人が特別徴収を行い、法人で納税をしているところがほとんどですが、個人事業主などで本人自ら納税等をしないといけない場合は、必ず理解してもらい、実施してもらう必要があります。納税等がきちんとできていないと在留資格の更新ができない恐れがあるため、こちらは必須になります。また、法人で納税する際に、給与からの天引きに関しても特定技能外国人がきちんと理解できるように説明が必要です。稀にこの部分を理解しておらず、トラブルに発展しそうなケースがあると聞くので、税金等に関しては必ず理解してもらうことが必要です。
その他の行政手続
自転車の防犯登録等、手続きが必要なものに関してです。

相談・苦情の際の連絡先について

支援担当者の氏名と連絡先
事前ガイダンスでのお伝えする必要がありますが、生活オリエンテーションでも実施する必要があります。
行政などの連絡先
支援担当者以外に行政への相談窓口の連絡先をお伝えする必要があります。入管やハローワークなどで、本人たちに渡すものを一覧にしておくと便利でしょう。

母国語で対応可能な医療機関について

母国語で診療が受けられる、またはインターネットサービスなどで通訳システムがある医療機関に関してです。エリアによって行政で一覧にされているケースもあるので、それらを活用するといいでしょう。

災害などの非常事態の対応について

他の国々に比べ、圧倒的に多いのが地震です。あまり地震を経験したことのない外国人もいる可能性があるため、事前に説明と最低限の対策は必須です。 また、緊急時の連絡先としての110番や119番、交番の場所などもお伝えする必要があります。

労働法違反などを知ったときの対応について

雇用上などで法律違反があったときにどう対応するかに関してです。そもそもどういうケースが法律違反なのかという説明と、入管や労働局の連絡先、連絡方法をお伝えする必要があります。

まとめ

今回は、生活オリエンテーションに関してでしたが、いかがでしたでしょうか。
事前ガイダンス同様に、1号特定技能外国人支援計画書に沿って実施する必要がありますが、事前ガイダンスでもそうですが、就業開始後にトラブルにならないように、事前に全ての説明をして、理解・合意をしてもらうことが大切です。また、初めて日本にくる方々もいるため、日本の生活に慣れながら、仕事にも慣れていけないということで、最初は負荷が大きいです。そこを少しでも負荷を軽減し、仕事に集中できる環境を作ることも大切です。
生活オリエンテーションは就業開始直前に実施されることが多く、事前ガイダンスの時よりも、本人たちが緊張感を持って説明を受けます。少しでも理解が怪しい部分は、理解度を確認しながら、何度も説明する必要があります。事前に合意形成ができていれば、条件面でのトラブルが起こりづらくなリます。事前に理解しているか、誤解している部分がないかを何度も確認しています。ここを怠ることによって、トラブルになる可能性があるため、就業開始前の生活オリエンテーションは非常に重要です。