近年、日本の飲食業界では深刻な人手不足が問題となっています。少子高齢化の進行に伴い、労働力の確保が困難になる一方で、訪日外国人観光客の増加や在留外国人の増加により、多言語対応が求められる機会も増えてきました。
このような背景から、外国人正社員の採用を検討する飲食店が増えているのは当然のことです。
しかし、外国人を正社員として雇用するためには、特定の在留資格が必要です。また、文化や言語の違いに配慮した職場環境の整備や、在留資格の更新手続きにも注意を払う必要があります。
そこで本記事では、外国人正社員の採用を希望する飲食店向けに、在留資格の種類や採用時の注意点、具体的な成功事例について詳しく解説します。
飲食店で外国人正社員を採用するメリット
外国人正社員を採用することは、飲食店にとって多くのメリットがあります。ここでは、その具体的なメリットをいくつか紹介します。
労働力の安定確保
外国人正社員を採用する最大のメリットは、安定した労働力を確保できることです。アルバイトやパートタイムのスタッフに依存する場合、シフトの調整が難しかったり、突発的な欠員に対応するのが困難な場合も多いでしょう。正社員として外国人労働者を雇用することで、長時間勤務が可能となり、労働力が安定します。
多様性のある職場環境
外国人労働者を採用することで、職場に多様な文化や視点が導入されます。異なる文化的背景を持つスタッフが共に働くことで、新たなアイデアや工夫が生まれ、サービスの向上や業務効率の改善につながることもあります。また、多文化環境での職場は、スタッフ同士のコミュニケーションや相互理解を促進し、チームワークを強化する効果も期待できます。
多言語対応によるサービスの向上
外国人観光客の増加や在留外国人の増加に伴い、飲食店には多言語対応が求められるケースが増えています。外国人スタッフを正社員として採用することで、外国語が話せるスタッフを常に確保することが可能になり、顧客サービスの向上が期待できます。特に英語や中国語、韓国語など、多くの観光客が話す言語に対応できることは、店舗の競争力を高める要素となります。
店舗イメージの強化
外国人正社員を採用することは、飲食店のブランドイメージ向上にも寄与します。特に、国際色豊かな店舗は、外国人観光客や在留外国人にとって親しみやすく、リピーターを増やすきっかけとなるでしょう。また、国際的な視点を持つスタッフがいることで、新しいサービスやメニューの導入など、革新的な取り組みが進むことも期待できます。
飲食店で外国人正社員を採用するための在留資格
外国人を正社員として雇用するためには、適切な在留資格が必要です。在留資格にはさまざまな種類があり、業務内容や就労条件によって適切な資格を選ぶ必要があります。
以下では、飲食店で外国人正社員を採用する際に考慮すべき主な在留資格について説明します。
特定技能ビザ(1号)
特定技能ビザは、日本の労働力不足を補うために2019年に導入された在留資格です。このビザは、特に飲食業界で外国人正社員を採用する際に利用されることが多く、業務内容としては飲食物の調理、接客、店舗管理などが含まれます。
特定技能1号では、最大で5年間の在留が認められ、技能水準を測る試験と日本語能力試験(JLPT N4以上)の合格が必要です。また、一定の条件を満たすと、特定技能2号に移行することができ、より長期的な在留や家族の帯同も可能となります。
また、詳しくは後述しますが、特定技能ビザの取得には登録支援機関または外国人の自社支援体制の整備が必要です。
技術・人文知識・国際業務ビザ
技術・人文知識・国際業務ビザは、主にデスクワークや経営管理に従事する外国人を雇用する際に適用されます。飲食店の運営や経営を担当するポジションでの採用が想定され、一般的なホールスタッフや調理師などの現場業務には適用されません。このビザを取得するには、学士号や専門的な資格が必要で、申請者が学んだ分野に関連する職務に就くことが求められます。
経営管理職やマーケティング職など、飲食店の拡大や発展をサポートする役割に適した在留資格です。
技能ビザ(シェフ)
技能ビザは、主に調理師として外国人を雇用する際に利用されます。このビザを取得するためには、調理に関する実務経験が10年以上必要とされ、対象となる職種は主に専門料理(外国料理など)に限られます。例えば、タイ料理のシェフを正社員として雇用する場合、この技能ビザが必要になります。
技能ビザを取得することで、外国人シェフを日本国内で長期的に雇用することが可能となり、店舗の特色あるメニューを提供することができます。
特定活動ビザ(告示46号)
特定活動ビザ(告示46号)は、日本の4年制大学を卒業し、日本語能力試験1級(JLPT N1)に合格した外国人に対して発行されるビザです。このビザを持つ外国人は、ホールスタッフやキッチンスタッフなど、飲食店での現場業務に従事することが可能です。高度な日本語能力を持っているため、顧客対応やスタッフ間のコミュニケーションにおいても円滑に業務を進めることが期待されます。
しかし、N1取得は非常にハードルが高いため、全体の人数としては多くありません。
飲食店で外国人正社員を採用する際の注意点
外国人正社員を採用する際には、いくつかの重要な注意点があります。ここでは、採用手続きや就労条件、文化的な対応について解説します。
在留資格の取得と更新手続き
外国人を正社員として採用するためには、まず適切な在留資格を取得する必要があります。また、在留資格には有効期限があるため、定期的な更新手続きが必要です。更新手続きが遅れると、外国人労働者が不法滞在となるリスクがあるため、注意が必要です。
申請手続きや更新に際しては、必要書類や条件を正確に確認し、不備がないように手続きを進めることが重要です。特に、初めて外国人を採用する場合は、ビザ申請に慣れていないことが多いため、専門家や登録支援機関のサポートを受けることが推奨されます。
労働契約と条件の整備
外国人正社員を雇用する際には、日本人正社員と同等の労働条件を提供することが求められます。労働基準法に基づいた労働契約を締結し、給与や労働時間、休日などの条件を明確にすることが重要です。また、外国人労働者の職場適応を支援するために、日本語教育や職場の文化に関する研修を提供することも効果的です。
文化・言語の違いへの対応
外国人正社員を雇用する際には、文化や言語の違いに対する対応が必要です。異文化のバックグラウンドを持つ外国人労働者がスムーズに職場に適応できるよう、日常的なサポートやコミュニケーションの場を設けることが重要です。また、日本語が得意でない場合には、業務に必要な日本語を教えるための研修や、他のスタッフとのコミュニケーションを円滑にする工夫が必要です。
登録支援機関の活用(特定技能人材の場合)
特定技能外国人を正社員として採用する場合、ビザの取得や生活支援などで困ることがあるかもしれません。こうした場合に、登録支援機関を活用することで、必要な手続きやサポートを受けることができます。特に、初めて外国人正社員を採用する飲食店にとっては、登録支援機関のサポートが大きな助けとなります。
🔽特定技能制度(外食業)について詳しく知りたいという方は、以下の記事をチェックしてみてください。
特定技能「外食」で優秀な人材を確保!概要や取得要件など徹底解説!
外国人正社員を採用した成功事例
ある大手飲食チェーンでは、国内での深刻な人手不足を背景に、特定技能制度を活用し、7人のネパール人正社員を一気に採用しました。この企業にとっては初めての外国人正社員の採用であり、外国人労働者を採用することに不安を抱えていましたが、弊社Funtoco(登録支援機関)の協力を得て、スムーズな採用を実現しました。
この採用プロジェクトでは、企業の担当者が弊社と共に実際にネパール現地に赴き、現地での面接会を実施しました。現地での対面での面接は、候補者との直接的なコミュニケーションを図る機会となり、採用後のミスマッチを防ぐための重要なステップとなりました。
この面接を通じて、日本語能力や文化的な理解、また企業の理念に共感できる人材を見極めることができました。
採用後、同社は7人のネパール人正社員を各店舗に平均2名ずつ配置し、複数店舗で労働力を安定的に確保することに成功しました。これにより、現場の人手不足が大きく解消されただけでなく、業務の効率化も進みました。
また、外国人スタッフが加わったことで多言語対応も可能となり、顧客満足度の向上にもつながっています。
安定した労働力を確保できたことで、将来的には新たな店舗展開も視野に入れることが可能となり、外国人労働者は企業の成長戦略にも大きな影響を与えています。
特定技能「外食」に強い登録支援機関Funtoco
特定技能「外食」人材の紹介・支援が可能な登録支援機関である弊社「Funtoco」では、累計1,400名以上(うち外食分野300名以上)の特定技能外国人を企業/飲食店様にご紹介してきました。
圧倒的に高い人材定着率が強みで、Funtocoが紹介する特定技能外国人の企業定着率は全業種平均で85%以上となっています。
社員の半分近くを多国籍な外国人で占めており、紹介した人材や支援委託を受けた人材の支援を母国語で行える点も強みです。特に、外食人材や介護人材の紹介を得意としており、「ネパール」「ミャンマー」「インドネシア」の人材紹介に強い点も特徴です。
人手不足にお悩みの飲食店様はもちろん、外国人採用に不安がある飲食店様、あるいは採用した外国人材の支援・サポートに手が回っていないという飲食店様は、ぜひFuntocoにお問い合わせください。