日本の外食産業は、急速な高齢化や少子化の影響を受け、人手不足という深刻な問題に直面しています。

このような状況下で、外国人材を採用できる特定技能ビザ制度は外食産業にとって重要な解決策となり、年々その在留者数は増加しています。

そこで本記事では、特定技能「外食」ビザの概要および現状から、ビザ取得に必要な具体的要件や試験問題、さらには登録支援機関に至るまで、詳しく解説します。

飲食店の大半が人手不足

2022年の帝国データバンクが発表した調査によると、全国の企業のうち47.8%が正社員不足に悩んでいます。

特に飲食店では、その割合が65.1%に達し、情報サービス業に次いで2番目に高い数値となっています。

出典:帝国データバンク

さらに、非正社員に関しては、全国平均で28%が人手不足を感じている中、飲食店では76.6%と唯一7割台に達しており、業界全体で深刻な労働力不足が顕著です。

出典:帝国データバンク

また、厚生労働省および農林水産省によると、日本の外食業における有効求人倍率(外食業計2.6%)は全産業平均(1.2%)に比べると2倍以上と高く欠員率についても他産業と比べて高くなっています(令和3年時点)。

出典:農林水産省

以上から、外食業界は今後も人手不足が加速することが予想されるため、飲食店では「人が辞めない職場環境を作る」「少人数でも店舗を運営できる体制を整える」「外国人労働者を採用する」などの対応が求められています。

特定技能「外食」ビザの概要


特定技能「外食」ビザは、前述したような、日本の外食産業が直面する人手不足を解消するために設けられた制度です。

この就労ビザは、一定の技能と日本語能力を持つ外国人労働者が、日本で外食業務に従事できるものです。

以下では、特定技能「外食」の在留数や取得要件、対象業務、在留期間、他のビザとの違いについて詳しく解説します。

日本の外食業における外国人労働者数

特定技能の説明をする前に、まずは特定技能も含め、日本の外食業で働く外国人労働者の内訳を見ていきます。

2021年(令和3年)時点では、日本の外食業で最も多く働いている外国人労働者の在留資格は、「資格外活動(=留学生アルバイト)」、次いで「永住者」「専門的・技術的分野(調理師など)」となっています。

出典:農林水産省

2021年時点では、在留資格「特定技能」で働く外国人労働者はまだまだ少なかったわけですが、2022年以降、その数は急増しています。

特定技能「外食」の在留数

前述のとおり、特定技能「外食」の在留数は年々増加しており、2023年末時点での数は13,312人となっています。


出典:出入国在留管理庁「分野別特定技能在留外国人数の推移」

特定技能全分野における外食分野の割合は6.4%(2023年末時点)となっており、他の分野と比べて多くはありませんが、全体に対する割合は制度開始以降、年々増えています

日本の外食業界では未だ留学生アルバイトが多く働いていますが、それだけでは人手不足を賄えなくなっており、今後は特定技能人材が外食業界でさらに増えていくと予想されます。

特定技能「外食」の取得要件

特定技能「外食」ビザを取得するためには、申請者が外食業務に必要な技能試験と日本語能力試験に合格することが必要です。

具体的には、外食業務に関する技能試験と、日本語能力試験N4以上の合格が求められます(詳しくは後述します)。

特定技能「外食」で可能な業務内容

特定技能ビザで認められる業務は、飲食店での調理、サービス、衛生管理、店舗管理などの業務です。

最も一般的なのは、調理スタッフやホールスタッフで、デリバリー業務なども従事可能です。また、ホテル内のレストラン業務のみであれば、特定技能「外食」で従事できます

ただし、デリバリーのみへの従事や、風俗営業許可が必要な店舗での業務、ホテル内での受付業務などは従事が認められていません

特定技能「外食」の在留期間

特定技能「外食」ビザ(1号)の在留期間は1年、6か月、4か月のいずれかで、最長で5年間まで在留期間を延長することができます。

特定技能1号から特定技能2号に移行することはできますが、移行するには2年間の店舗管理(副店長、サブマネージャーなど)の実務経験が必要です。

2号に移行できると、更新さえすれば制限なく日本に在留することができ、家族帯同も可能になります。

特定技能「外食」と他のビザとの違い

「特定技能ビザ」以外で一般的な「技能実習ビザ」は、人材育成を目的とした制度であり、一定の期間が過ぎると基本的に帰国する必要があります(特定技能1号への移行も可能)。

しかし、「技能実習ビザ」は日本語能力が比較的低くても取得できるビザであり、実質上は就労を目的としたビザとなってしまっています。そのため、今後「技能実習ビザ」は廃止され、特定技能1号への移行を目的とする「育成就労制度」に変更されます

また、外食業では留学生アルバイトを採用するケースも多いですが、即戦力として長期間働いてくれる特定技能人材の人気が業界では高まっています。

特定技能「外食」の取得要件と試験問題


次に、特定技能「外食」ビザの取得に必要な要件と試験問題について説明します。

日本語能力試験

特定技能「外食」における外国人の日本語能力を測る試験は、「日本語能力試験(JLPT)」「国際交流基金日本語基礎試験」の2種類があり、国内と場合と国外の場合で要件が少し異なります。

国内の場合:日本語能力試験(JLPT)N4以上に合格
国外の場合:日本語能力試験(JLPT)N4以上または国際交流基金日本語基礎試験A2以上に合格

試験問題

まず前提として、国際交流基金日本語基礎試験の受験者数は少なく、日本語能力試験を受験する場合が大半です。

日本語能力試験はN5からN1までの5段階があり、特定技能「外食」ではN4以上が必要です。N4の試験は、漢字の読み方や書き方、単語の意味、文法問題などが含まれます。

技能試験

外食業特定技能1号技能測定試験は、年に数回実施されます。この試験は国内外で受験が可能ですが、現在は年間で3~4回程度の実施にとどまっています。

国内外を合わせた試験の合格率は約65%(2023年末時点)とされているため、将来的に留学生の外国人アルバイトを特定技能ビザで雇用したい場合などは、早めに試験を受ける(案内する)ことをおすすめします。

試験問題

技能試験は、学科試験と実技試験の二部構成になっています。

学科試験では、飲食店における衛生管理や接客に関する知識が問われ、実技試験では、図やイラストを用いて正しい行動を選択する問題が出題されます。

学科試験のサンプル問題は、こちらをご確認ください。

また、各試験における詳細情報については、以下の農林水産省資料をご参考ください。
農林水産省「外食業分野における特定技能外国人制度について」

「外食」分野における特定技能協議会とは

特定技能協議会とは、特定技能ビザで外国人労働者を受け入れる企業が加入する必要がある組織です。

この組織は、特定技能対象の12の産業分野ごとに各管轄省庁が中心となり、業界団体や受入機関、登録支援機関、学識経験者などで構成されています。

協議会は、特定技能外国人の適正な受け入れや、外国人の権利を守り保護することを目的に設立されました。

また、各協議会は情報共有や連携を図っており、特定技能外国人の受け入れ制度や優良事例を共有することはもちろん、受け入れ企業に対して調査や指導を実施することもあります

特定技能協議会については、以下の記事でより詳しく解説していますので、ご参考ください。
特定技能協議会とは?外食分野における加入要件や加入方法を徹底解説

特定技能「外食」で優秀な人材を確保する方法


特定技能「外食」で優秀な人材を確保するためには、外食人材の受け入れ実績がある登録支援機関を活用することが効果的です。

登録支援機関は、適切な人材のマッチング、特定技能ビザ申請手続きのサポートや入国対応、人材受け入れ後の教育、生活面のサポート、定期面談(法的義務)、就業後のトラブル対応など、包括的な支援を行います。

登録支援機関を活用せず全てを自社で行うことも可能ですが、初めての外国人材の受け入れは想像以上に大変なため、まずは登録支援機関を活用し、慣れてきたら内製化してみてもいいでしょう。

ただし、外国人材が職場に早く適応できるよう、受け入れ企業側も積極的な取り組みを行うべきです。社内でも日本語や日本文化の研修を実施し、既存のスタッフとのコミュニケーションを促進することで、労働環境を整え、定着率を高めることが非常に重要です。

初めての受け入れで不安な企業は、外食人材の受け入れ実績が豊富な登録支援機関を上手に活用しましょう。

特定技能の外食人材に強い登録支援機関「Funtoco」


特定技能「外食」人材の紹介・支援が可能な「登録支援機関」である弊社「Funtoco」では、累計1,100名以上(うち外食分野200名以上)の特定技能外国人を企業様にご紹介してきました。

圧倒的に高い定着率が強みで、Funtocoが紹介する特定技能外国人の企業定着率は全業種平均で85%以上となっています。

社員の半分近くを多国籍な外国人で占めており、紹介した人材や支援委託を受けた人材の支援を母国語で行える点も強みです。特に、外食人材や介護人材の紹介を得意としており、「ネパール」「ミャンマー」「インドネシア」の人材紹介に強い点も特徴です。

人手不足にお悩みの外食企業様はもちろん、外国人採用に不安がある企業様、そして採用した外国人材の支援・サポートに手が回っていないという企業様は、ぜひFuntocoにお問い合わせください。